規定ですので...何のための緊急一時保育ですか？-ぽったーと生まれて

次男の出産を決意すると同時に、それはおそらく困難な出産になるだろう、ということが予想できました。

障害児の兄弟として、親の保護を十分に受けずに育ってきた私にとって、長男を同じ目にあわすことだけは意地でも避けたいことでした。私の場合、緊急事態が起きた時は、突然夜間まで一人で留守番や、出先から母が同じマンションの住人に電話をかけ、大人同士で了解を取り、上の階の、私にとっては馴染み深くない、おばさんが突然やってきてご飯食べにおいで、と言われたりするといったようなことがありました。一方で知らない大人について行ってはいけない、などと言われるのです。勝手なものです。周囲の状況から自分にとって安全か、安全でないか、を察知する能力が異常に養われましたが、未就園児の子供にそんな能力をつけさせる必要はありません。

私の希望は、緊急入院となった際に、区の緊急一時保育を利用し、日中は長男には保育園で過ごしてもらう、夫はなるべく時短で夕方以降は親が子供に寄り添う時間を持つこと、でした。母が子供時代の罪滅ぼしに手伝いに来てくれる、と言ってくれましたが、もれなく姉もついてきます。子供の安全を考えると日中は保育園に行ってもらった方が良いと判断しました。

私は当時東京都の23区内に在住でした。米国から帰国してこの区に転居した時に、３歳の長男の保育園を探しましたが、あと半年で幼稚園に入れるんだから、そちらに入られたらどうですかね、と残念ながら全く相手にしてもらえませんでした。転居と同時に妊娠がわかり、重い悪阻でしばらく仕事もできなかったり、もう幼稚園でいいや、と思っていましたが、次男の病気がわかり、緊急一時保育を申請しに行きました。

緊急一時保育は予約制で、予定のわかっていることであれば様々な目的のために、それなりに柔軟に対応してくれます。冠婚葬祭、同居親族の病気入院や、出産は一番多く利用されている案件だと思います。しかし、私の場合、体は現時点で健康、しかし急変すれば、緊急入院、日中子供を見る人がいない、という条件です。これが緊急一時保育の利用規定にあてはまらない、というのです。今時点で私が健康なら親の病気入院という要件は使えず、出産の場合、出産予定日の前後１か月、という規定があり、こちらもダメです、と言います。

万一臍帯融解や胎盤剥離で出血があった場合には30分以内で緊急オペに入りたいと言われていても、です。そこから先は時間との勝負で、時間が経てば経つほど、母子ともに命の危険に晒されていく、それがいつ起こるかはわからない、という状態でした。夫の会社からは自宅にもS医療センターにも１時間ちょっとかかります。保育のために帰宅を待っていては私も次男も死ぬかもしれません。

年末に一度、年明け一月に一度、区役所の保育課の窓口で断られ、2/19に今すぐに管理入院するべき、と医師に言われ、もう一度お願いに行きました。「規定ですから...」とまた断られ、私の中で何かがぷつっと切れました。

命の危険がある、と医師に診断されているにもかかわらず、子供の安全のための保育を提供してもらえないんですね？子供の預け先がないことで私の救急処置が間に合わず、私と胎児が死亡する、あるいは保育者不在のまま処置が始まって、不安に駆られた子供が危険な行為をしても誰も見ている人がおらず命に関わるような事故が起きる、あるいは最悪両方が起きて３人が命を失うかもしれない。すでに２度交渉に来ていて規定を満たさないという理由で断られている経緯は文書でまとめてあります。今日は３度目です。本当に困って助けて欲しいと三回も来ていて断られているということを書類にまとめておきます。もしも私が死んだ時にはこの文書を公にする手はずをとります。

こんな脅すような言い方どうかと思いますが、その時はもう、ぷつっときてしまって涙を我慢しながら出た言葉がこれになってしまいました。

私の剣幕に慌てて、担当の人がチェンジし、課長さんが出てきました。自宅から近い、緊急一時枠のある保育園に電話をしてくれ、予約を明確にできない、病的な事情があるので、特例で２ヶ月の枠で抑えたいが可能か、と聞いてくれました。保育園は即答で受け入れ可でした。その間ものの10分。丁寧な謝罪と共にいとも簡単に決着がつきました。

なんだったんでしょう、前２回の交渉...。

そして規定とは...。

長男の預け入れ先を確保できたものの、疲労感と虚しさが残りました。