入り口の自動ドアを入ると広い吹き抜けのロビーに大きなモビール、そこかしこに子供の喜びそうなアートやおもちゃ、インテリアもカラフルでポップで、思わず、わあ!と少しときめいてしまった。
いつ何があっても、最後まで赤ちゃんのペースに付きそうんだ、と心を決めてから目に入るものの全てが色鮮やかで美しく、かけがえのない時間に感じられるようになった。ちょうど年の瀬、クリスマスとお正月のシーズンで街は賑やかに飾り付けられていたからひとしおだ。
Sセンターは子供のための総合病院で、広い敷地に研究棟と入院棟に分かれて建っている。入院棟の1F〜3Fは外来診察室や検査室だ。詳細に分かれた専門的な小児医療を受けることができる。産科は3Fだ。
多くの妊婦さんがハイリスクで他院からの紹介できているが、地域連携で近くに住んでいる一般妊婦さんや、この病院で不妊治療を行って、そのまま産科までかかっている人もいる。高度医療が受けられるとあって、出産費用は高額になるが、赤ちゃんに少しでも心配のある妊婦さんには人気だという。一般産科の初診予約は月に一度電話で行っており、なかなかつながらないのだそうだ。個人クリニックで産後エステが付いているとか、ご飯が美味しいとか、プライベートプールがあって水中で産めるとか、昨今出産は一つのビジネスになっているけれど、我が子のために、お金を払って安全を買う、という考え方のお母さんもたくさんいるんだな、と思った。
妊婦検診は助産師さんに様々な計測をしてもらったり、健保からは外れ、市区町村の助成金に頼ることが多いので、転院の場合、書類の確認など診察以外にも煩雑なやりとりも多い。諸々の手続きを終えて、さあやっと診察、と混み合う産科の待合室で座るところを探していると、看護師さんに『Annさんは〇番でお待ち下さい』と促される。え?どこ?掲示に沿ってどんどん進んでいくと、ひと気のない建物の端っこまで来てしまった。産科ではなく、そこには"胎児診療科"と書かれていた。
誰もいないのですぐに呼ばれる、というか呼び出しシステムすらなくて、先生が部屋から出てきて、どうぞ、と部屋に招き入れられた。
別室で技師にエコーはすでに撮ってもらっていて、この部屋では内診を受け、先生と話しをする。初診だったので、夫も会社を休んでついてきていた。
いかにも研究者という感じのコミュニケーションの豊富ではないタイプの男性の先生だった。聞いてみたいことがいろいろとあったので、質問リストを作っていった。
しかし最初に聞いたのは、やっぱり、「腎臓はないですか?」だった。
「残念ながら、腎臓はありません、これが膀胱かな、という空間はありますが、尿たまりがないんですよね」と言われてしまいました。
そうですか....。
やっぱりないですか...。




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